えんぱち「アグリ通信」2026年9月号では、秋冬野菜やイチゴの定植期に向けて、「活着」と「省力化」をテーマに特集しました。
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9月は、レタスやブロッコリー、キャベツなど秋冬野菜の定植が本格化する時期です。また、イチゴでも本圃への定植が始まります。
一方、近年は9月になっても厳しい残暑が続き、定植直後の苗は高温や乾燥の影響を受けやすくなっています。
育苗中はセルトレイの中で水分や肥料を管理されていた苗も、本圃へ定植されると、水分、地温、日射、風など周囲の環境が一気に変化します。
特に、定植後に根が根鉢から周囲の土へ十分に伸びるまでの期間は、苗にとって不安定な時期です。この時期に活着が遅れると、生育の遅れや株ごとのばらつき、場合によっては欠株につながります。
秋冬作のスタートを揃えるためには、
・定植前に苗の状態を揃える
・活着までは乾燥と高温から守る
・定植前の灌注処理で初期防除を省力化する
・バイオスティミュラント(BS資材)で根づくりを補助する
という一連の管理が重要です。
今回は、秋冬野菜の定植時に押さえておきたい基本と、セルトレイ灌注を活用した防除・省力化について詳しく紹介します。
秋冬野菜の活着を揃えるために、まず意識したいのが定植前の根鉢の水分です。
同じセルトレイの中でも、
「十分に吸水している苗」
「根鉢が乾き気味の苗」
が混在していると、定植後の立ち上がりにも差が出やすくなります。
定植したばかりの苗は、まだ本圃の土壌へ十分に根を伸ばしていません。そのため、定植直後は根鉢に含まれている水分の影響を大きく受けます。
特に9月の晴天時には、セルトレイの根鉢が想像以上に早く乾燥します。朝に十分かん水したつもりでも、定植作業が午後まで続けば、苗の水分状態が変わっている場合もあります。
定植前には表面だけを見るのではなく、根鉢全体にしっかり水が入っているかを確認し、できるだけ苗の状態を揃えておくことが重要です。
一見すると地味な作業ですが、定植後の活着を揃えるための第一歩になります。
定植後の苗は、根が本圃へ十分に広がるまで、乾燥の影響を受けやすい状態にあります。
この時期に重要なのは、
「土の表面が濡れているか」ではなく、「根鉢とその周囲まで水が届いているか」
を確認することです。
定植直後に根鉢だけが乾燥してしまえば、周囲の土が湿っていても十分に吸水できないことがあります。
一方で、暑いからといって長期間多量のかん水を続ければよいわけでもありません。
活着後まで過湿状態が続くと、土壌中の酸素が不足し、かえって根の働きを妨げる場合があります。
基本的には、
活着までは乾かさない
↓
活着後は根の状態を見ながら通常管理へ切り替える
という考え方が重要です。
また、残暑期には気温だけでなく地温にも注意が必要です。
暑い日中の定植をできるだけ避け、朝夕の比較的涼しい時間帯に作業することや、作型によっては遮光・遮熱資材などを組み合わせることも、定植時のストレス軽減につながります。
秋冬野菜の定植期には、圃場準備、定植、かん水、施肥、防除など、さまざまな作業が集中します。
その中で省力化につながる方法の一つが、育苗期後半から定植前に行うセルトレイ灌注です。
本圃へ定植してから薬剤散布を行うのではなく、セルトレイの段階で農薬をまとめて灌注することで、多くの苗を一度に処理することができます。
例えば、ブロッコリーやレタスなどでは、ベリマークSCなどを利用した定植前の初期害虫防除があります。
コナガ、ヨトウ類、アブラムシ類など、定植直後から問題になりやすい害虫に対し、苗の段階で処理しておくことで、本圃での初期防除作業を軽減することができます。
また、ブロッコリー、キャベツ、はくさいなどのアブラナ科野菜では、根こぶ病対策としてオラクル顆粒水和剤などを定植前にセルトレイへ灌注する方法もあります。
苗灌注のメリットは、防除効果だけではありません。
育苗トレイの段階で処理できるため、
・薬液調製
・薬液の運搬
・本圃での散布作業
・定植後の防除作業
などを減らせる可能性があります。
例えばブロッコリー根こぶ病対策では、ランマンFLの苗灌注は1トレイ当たり2Lであるのに対し、オラクル顆粒水和剤では1トレイ当たり0.5Lで処理できる登録があります。
128穴セルトレイ、10a当たり4,000株と仮定すると、約31.25トレイが必要です。この場合、ランマンFLでは10a当たり約62.5Lの薬液が必要になるのに対し、オラクル顆粒水和剤では約15.6Lとなり、灌注する薬液量を約75%減らせる計算になります。
薬剤費だけを見るのではなく、
必要水量・給水回数・薬液調製・運搬・灌注時間
まで含めて考えると、大面積になるほど省力化のメリットは大きくなります。
農業現場の生産性向上を考えるうえでは、
「どの農薬を使うか」だけでなく、「いつ、どの工程で処理すれば作業を減らせるか」
という視点も重要です。
※農薬の適用作物、対象病害虫、希釈倍数、使用液量、使用時期、使用回数等は変更される場合があります。実際の使用時には、必ず最新の農薬登録内容・製品ラベルをご確認ください。
定植前後の灌注処理は、農薬だけに使える方法ではありません。
近年注目されている**バイオスティミュラント(BS資材)**の中にも、育苗期から定植前に灌注し、根張りや活着、初期生育をサポートする資材があります。
当社で取り扱っている**「ストラクチャー®」**もその一つです。
ストラクチャーは、高活性腐植酸を配合した資材で、葉菜類などでは育苗期から定植前の苗灌注に活用できます。
農薬とBS資材では役割が異なります。
農薬=病害虫から苗を守る
BS資材=根づくりや環境ストレスへの対応をサポートする
という関係です。
つまり、定植前の同じ時期に、
「初期防除を考える」
「活着・根づくりを考える」
という二つの視点を持つことができます。
もちろん、BS資材を使用すれば基本的な栽培管理が不要になるわけではありません。
水管理、温度管理、土づくりなどを適切に行ったうえで、定植時の環境変化を乗り越えるための補助的な手段として活用することが重要です。
当社と仕入先では、香川県内のレタス・ブロッコリー圃場でもストラクチャーを使用した事例を確認しています。
2025年、観音寺市内のレタス圃場でストラクチャーを使用しました。
9月7日に播種したセル苗に対し、9月19日にストラクチャー1,000倍液を200mL/トレイで灌注し、9月22日に定植しています。

現地では、
・セル苗の根張りが良かった
・定植後の活着が例年と比べて早くなった
・無処理区と比較して初期生育に差が見られた
との評価がありました。
写真を見ても、無処理区とストラクチャー処理区では、根鉢の根張りや葉のボリュームに違いが確認できます。
なお、1,000倍・200mL/トレイは今回の現地事例で実施した処理条件です。現在メーカーが案内している使用方法とは異なる場合があるため、実際の使用にあたっては最新のメーカー情報をご確認ください。
坂出市内では、ブロッコリー「ルミナス」で、定植前にストラクチャーをセル苗へ灌注した事例があります。
【ここに「ブロッコリー 茎・根張り」の写真を掲載】

現地では、
・欠株が減り、全体の立ち上がりが良かった
・圃場全体がむらなく健全に生育していた
・根張りが良く、茎が太かった
・倒伏しやすい品種だが、倒伏が見られなかった
・慣行区よりやや収穫が早かった
といった声がありました。
写真でも、太い茎としっかりした根張りが確認できます。

圃場全体でも生育が揃っており、欠株が少なく、葉がしっかりと立っている様子が確認できました。
これらはあくまで現地での使用事例・聞き取り結果であり、ストラクチャーの効果を保証するものではありません。
ただし、定植時の「根づくり」「活着」を考えるうえでは、非常に興味深い事例だと考えています。
定植時の省力化を考えるうえで大切なのは、農薬やBS資材を一つ一つの商品として見るだけではなく、作業工程全体を見ることです。
例えば、
定植前に苗へ十分吸水させる
↓
セルトレイで農薬を灌注し、初期防除を行う
↓
BS資材で根づくりをサポートする
↓
本圃へ定植する
↓
活着するまで水分・高温を管理する
という流れです。
従来、本圃で行っていた作業の一部を育苗段階へ移すことができれば、定植後の忙しい時期の作業を減らすことにつながります。
特に、農業現場では人手不足が進んでいます。
その中で重要になるのは、単に高性能な農薬や資材を選ぶことだけではありません。
「一つの作業で複数の目的を達成できないか」
「後で行っている作業を前工程へ移せないか」
「水や薬液の量そのものを減らせないか」
という視点で作業体系そのものを見直すことが、生産性向上につながります。
なお、農薬とBS資材については、同じ灌注という作業タイミングを利用できる場合がありますが、すべての農薬とBS資材を自由に混用できるわけではありません。
同時処理や混用を検討する場合には、必ず各製品のメーカー情報や混用可否をご確認ください。
定植というと、「苗を圃場へ植える作業」に目が向きがちです。
しかし、秋冬作のスタートを揃えるためには、
定植前の苗の状態
↓
根鉢の水分
↓
初期防除
↓
根づくり
↓
定植後の水・温度管理
までを一連の作業として考えることが重要です。
特に残暑が厳しい9月の定植では、
・苗の状態を揃える
・活着までは乾かさない
・高温から守る
・定植前灌注で初期防除を省力化する
・BS資材で根づくりを補助する
という考え方が、秋冬作の安定したスタートにつながります。
人手不足が進む農業現場では、「何を使うか」だけでなく、
「同じ作業で複数の目的を達成できないか」
「本圃で行っている作業を育苗段階へ移せないか」
という視点が、これからますます重要になります。
喜多猿八では、農薬・肥料・バイオスティミュラントなどの資材販売だけでなく、それぞれの圃場や作物、作業体系に合わせた活用方法をご提案しています。
レタス、ブロッコリー、キャベツ、イチゴなどの定植時の活着対策や、セルトレイ灌注による省力化についても、お気軽にご相談ください。
今回ご紹介した「秋冬作の活着と省力化」について、アグリ通信2026年9月号でも写真や商品情報を交えて紹介しています。
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